一般的に相続トラブルというと、遺産を誰がどれだけもらうのか、といった内容が多いものですが、そうした金銭や不動産などの争いのほかにも、相続では様々な問題が出てきます。
例えば、被相続人(亡くなった方)の遺骨についてのトラブルです。
遺骨に関するトラブルで多いのが、相続人などの誰が遺骨を引き取るのか、どのお墓に遺骨を納めるのか、といったものが典型的です。
遺骨の取り合い、押し付け合い、お墓や祭祀財産など、問題は様々です。
遺骨を引き取っても相続分が増えるわけではない
これはよく勘違いされるのですが、たとえ祭祀財産(仏壇やお墓など)を引き取っても、その相続人の法定相続分が増えるわけではありません。
遺骨というのは、いわゆる祭祀財産のひとつとして解釈されています。
しかし、祭祀財産を承継して遺骨を引き取った後も、法事であったりお墓の管理料といった負担は増えることになります。
ですから、相続人間で遺骨の押し付け合い、などといったトラブルが生じることもあるのです。
故人にとっては何とも悲しいことですが、こうしたトラブルもかなり多いのが現実なのです。
熟年離婚・熟年再婚では遺骨トラブルが起きがち
そして近年、いわゆる熟年離婚や熟年再婚といったケースも少なくありません。
これもまた、遺骨に関するトラブルの一因となることがあります。
例えば、熟年再婚した男性の元の配偶者がすでに亡くなっていて、すでにお墓に入っているといった場合、再婚した妻が前妻と一緒のお墓には入りたくない、といったことも出てきます。
その際に、亡くなった配偶者のお墓(遺骨)を別の場所に移してほしい、といったことを求める方もいます。
これはなかなか難しい問題ですが、熟年再婚を考えている方は、将来の相続といった問題とともに、このような点も十分に考慮しておく必要があるでしょう。
遺骨のトラブルを法律で解決するのは難しい
厳密に法的な解釈をすれば、人が亡くなると遺体は『モノ』となりますので、相続人の共有物ということになります。
ただし『遺骨』になると、これは祭祀財産という扱いとなるのが一般的な考え方です。つまり、祭祀主宰者(喪主、お墓を受け継ぐ人など)のものということになります。
しかし、遺骨の取り合い、押し付け合い、熟年再婚での遺骨トラブルといったことは、これを法律で解決することは難しいものです。
ですから、まずは被相続人本人が生前のうちに、こうした問題をよくよく考えたうえで、遺言書やエンディングノートといったものを活用して、きちんと意思表示しておくことも必要でしょう。
これからの超高齢化社会では、このような問題がさらに多くなってくるでしょう。
また、まったく身寄りがない、親類も長年疎遠になっているといったケースでは、財産の行く末だけでなく、自分の遺骨などをどのようにしてほしいのか、といったことも考えておかなければなりません。
自分が亡くなったら、遺骨の行く末も含めて生前によく相続人と話し合ったり、生前契約といったことも検討しておくのがよいかもしれません。